てんきた

【てんきた】利息は一律500円【vol.24】

天界から来ました。

先日父親にお金を貸した。6万円貸したかと思いきや、返ってくる前に12万円追加だそうだ。大人になると金の無心をされると言うが、まさか自分がそんな目に遭うとは思わなかった。

とはいえ別にそんなのが嫌なわけじゃない。親を養えないほど稼ぎが少ないわけでも無ければ、お金をあげたくないほど疎遠になっているわけでもない。

お金の面で頼りにされて嬉しいかと言うとそういうことは全くなく、むしろ使わなくていいお金は使いたくないタイプ。

けれども大学出て資格を取るまでにかかった余分なお金は返したいなと思っているし、少し後ろめたくも思っている。持ちつ持たれつなのだ、なんだかんだで。

利息付けるから貸してくれ

親からお金を貸してほしいと言われるのは実は初めてではない。初めてではないどころか昔から貸していた。働いたのと物理的に距離が空いたのとで一度に貸す金額が大きくはなったが。

子供のころ、私はお小遣いが無かった。いつまで無かったかと言うと大学で仕送りをもらうまでは無かった。実家暮らしの間はお小遣い制ではなかったのである。

生活は年始にもらうお年玉だけ。親戚の数が多かったのもあって、小学生の頃は3万円くらい、中学生になると8万円くらいお年玉だけで手に入った。

それを100円均一で買ったお小遣い帳につけ、誰からいくらもらって何にいくら使ったかを毎日記入していた。ああ、今思うとあの頃の方がマメだったな。お金を数えて先の計画を立てるのが好きだった。

ギャンブル大好きな父親

父親はと言うと、実のところ私は父がお小遣い制だったかどうかは知らない。なんとなく給料袋を母に渡していたし、パチンコで負けない限りは父の財布が空になることは無かった。

父はたまに負ける。ほんとのほんとにたまに負ける。そういう時は財布がすっからかんになる。パチンコや競馬に行って帰ってきた後の財布を家族そろって叩くのが習慣だった。

薄いね、負けたのか。厚いね、でもこれは小銭かあ。そんな話をよくしていたのを覚えている。

「ハヤエル、ちょっと金かしてくれ」

週末になるとよくそう言われた。ああ、またかと思い自分の部屋のタンスの左上の高さの低い引出しからお年玉を取り出す。

「いくら?」

「2万もあればいいな。利息付けて返すから。」

トイチではない。即日500円だ。率にすると2.5%/日。10日で2.5割と考えるとトイチよりひどい。たとえ1万円借りたとしても即日で500円。その場合は5%/日だ。

もちろん貸す金額が小さかった分、利息率なんて話題にも出ず、父が遊びにいく度に500円もらえたので悪い気はしなかった。

父は賭け事が好きだが儲けたいという気持ちは少ない。というかわかっている。ギャンブルで大儲けなんてできないことを。楽しいからやっているだけ、だから勝てるんだと思う。

お金を貸して遊びに行くと大体買って帰ってくる。帰ってくるや否や私にお金を返し、はい利息と500円をよこす。そしてパチンコに行った日には必ずそのパチンコ屋のそばの屋台のたこ焼きを買ってきていた。

大勝ちしたときは50個くらい買ってきていた。私たち家族は、たこ焼きが食べれるだけで満足で、買った分のお金は勝手にしてくれと気にする由もなかった。

頼みにくくなった金借り

「ハヤエル、ちょっとお金貸してもらえるか?」

半分笑いながら、なんとも罰が悪そうな声で電話してくる。借りる理由は生活のため。自分の遊びのためじゃなくなった。

「なに、いくらさ。今預金が○○円しかないんだけど足りる?」

「お、10万円くらい…いや、12万円もらっとくか、一応。」

ヒトの預金額を聞いて借りる額を上げた。こういうところは本当にどうしようもない人だなと思う。

今は特に利息をもらう気はない。もう少し自分に余裕があるときなら正直、あげたいくらいだ。そのくらいの方が格好付くのになと自分にちょっぴり残念な気持ちになる。

たぶんこれから先も断ったりはしないだろう。頼まれればあげてしまう。甘やかしていると言われても、ATMだと言われても、もし頼まれたらあげる。というか頼まれたい。

何一つ不自由せず、節制せずに過ごしてほしい。彼らにはその権利があると本気で思っている。

だからもうちょっと稼げたら、ベースの部分を補って豊かな生活をさせてあげたい。自分のお金を遊びに使えるように。

 

「利息、2万足してピッタリきりのいい20万にして返すからな。」

あら、500円じゃなくなったのね。無理しなくていいのに。